有限会社 スギ 代表取締役 杉 茂典
1951年5月4日生まれ。
岡山県理美容専門学校卒業後、実家のビューティー・フタバを継ぎ24歳で4代目オーナーとなる。その後、店名を「ヘアショップSUGI」に変え、現在2店舗のヘアサロンを経営。 海外の美容学校にも通い培った技術でカット講師としても活躍、今までに教えた人数は7,000人を超える。
僕が美容師を志したきっかけは、母方の家系が代々ヘアサロンを営んでいたから。
『ビューティー・フタバ』という、岡山で1893年から続く老舗ヘアサロンでした。当時はお世辞にも繁盛しているとはいえず、毎月赤字を出していました。幼い頃から思い入れのある『ビューティー・フタバ』をこのまま終わらせたくない、との一心で美容師を目指したんです。
高校に通いながら同時に通信制の美容学校にも入学し、美容の勉強を始めました。
当時は美容師といえば女性の仕事。実際、通っていた美容学校でも卒業生約120人のうち、男は僕一人だけでした。
男性として完成度の高い美容師人生を生きた人はほとんどいませんでしたね。女性が主流だったので、途中でやめてしまう男性が大半。男性にとって『美容師』という職業が確立していないのなら、僕が確立させてやろうと決めました。
大卒のサラリーマンにも負けないくらい稼いで、男性でも美容師としてやって行けるんだっていうのを世間に広めたかったんです。負けず嫌いな性格もあったのかもしれませんね。
美容師となってからは、24歳で『ビューティー・フタバ』を継ぎました。その当時の美容業界を見て、成長はしているが、成熟しきっていない、まだまだやれることがたくさんあると思ったんです。
まずは店舗を改装して他にはないスタイリッシュな空間にし、『ヘアショップSUGI』として生まれ変わらせました。そこから今までにないサロンスタイルを打ち出しました。
その一つが美容師それぞれの技術力に見合った料金設定です。これは、業界初の試みでしたが、高い技術力を持った美容師を育てる為には大切なことだと思って実行しました。
それから、SUGIで提供しているヘアスタイルを分かりやすく伝えるため、当時は珍しかったフォトセッションを行いました。写真はやっぱりイメージが直接伝わるので、お客様にも喜ばれましたね。また、スタイリストのモチベーションアップにも繋がりました。写真は全国誌にも掲載されて、SUGIの名が全国にも知られるようになりました。
そして、その写真を使って『ビバ・ラ・スギ』という、リーフレットも発行しました。その中でヘアスタイルの紹介やコンテストのエピソードなどをお客様に発信することで、スギとお客様との関係をより近いものに出来たと思います。
ショップオーナーになってからが、本当の勉強の始まりでした。優れた技術が学べるとなると、国内外問わず必死で勉強に行きました。まだ気軽に海外へ行くことも出来なかった時代に、ロンドンのヴィダルサスーンスクールへも入学し、ありとあらゆるカットを習得しました。
こうして海外で学んだカット技術は、日本ではまだ普及していませんでした。今後の美容業界の発展には、このカット技術が絶対に欠かせないと思い、みんなに学んで欲しかった。だから、28歳のときからカット講師を始めたんです。今でもサロンワークとは別にカット講師として教え続けていますが、今までに教えた人数は7,000人を超えました。自分でもびっくりしてしまいます。
岡山の美容師を海外に連れていって、一緒にコンテストに参加したりもしました。少しでもたくさんの美容師にレベルの高い技術を勉強してもらって、美容業界を盛り上げたいと思ったからです。
自分は美容師のあるべき姿を見せたいんです。自分が今まで培って来たものを誰にも伝えず終わってしまうなんてもったいないですからね。それに男性美容師の手本になるって決めたからには、その基盤をつくって伝えて広めて行くのが僕の使命だと思うんです。僕が学び教えて来たことをきっかけに、より良い接客と技術を身につけてもらえれば、本当にうれしいです。スギのスタッフや、僕のところで修行し独立した美容師が活躍する姿を見るのが楽しみの一つでもあるので。
最近では一時の流行に特化したヘアサロンなどが多く、世界の傾向を捉えていないのが残念ですね。僕たち美容師は、世界レベルの技術を発信していかなければなりません。流行と傾向は違うもので、流行だけを見据えたヘアサロンは数年で姿を消してしまうでしょう。長く愛される為にも、目先の流行に流されず、しっかりとしたビジョンを持ち、サロンワークに取り組んで欲しいですね。その為には、美容業界全体の人材育成に対する在り方も変えていかなければなりません。新人美容師が成長しやすい環境にしてゆくのがこれからの課題の一つだと言えるでしょう。
僕の今の目標は岡山を美容王国にすることなんです。最先端の美容っていうとやっぱり東京が思い浮かびますよね。ですが、岡山の美容業界は高いレベルに至っていますし、日々進歩しています。もちろん、美容の道に完成はありません。まだまだ進歩する余地はあると思います。カットにしても、パーマにしても、ヘア技術の可能性は無限大です。これからの美容師に新しい可能性を見いだしていって欲しいですね。そして、ゆくゆくは『美容を勉強するなら岡山へ』っていうイメージを創りあげたいと思っています。その為にも僕自身これからも頑張っていきますよ。
生涯現役で男性美容師の手本として生きていきたいと思っていますから。